Cut5,000円+Treatment2,000円
Cut&Treatment7,000円
両者の価格は同じですが、表示が違います。
この違いは、顧客心理にどのような影響を与えるか。
一緒じゃん!
と思ったあなた。
脳科学マーケティングの世界ではこの差は大きく異なると結論づけられているので、その先入観を一度リセットし、まずは下の記事を読み進めてください。
【基礎知識】価格の判断を増やすデメリット
どちらがお得かを解説する前に、まずは価格設定の基礎知識をつらつらと。。。
上記で説明した2つの例について。
同じ7,000円でも顧客が感じ方は異なります。
1つは「価格判断の回数」
5,000円のカットと2,000円のトリートメントを別々のものと考えると、お客さんが決断するタイミングは2回ありますよね。
- 1回目:カットの依頼
- 2回目:トリートメントの依頼
お客さんは、美容師さんにサービスの依頼をするたびに費用負担を決断するわけです。
その決断回数が多ければ多いほど、「見送り決断」が増える(つまり、トリートメントの依頼が行われない)こととなります。
脳科学マーケティングの世界では、費用負担という心理的負荷がかかる決断の回数を減らすことは一般的。
この顧客心理を活用しているのが、結婚式やスマートフォンキャリアのサービスです。
サービスをオールインワンにすることで、お客さんにはお得感を感じさせつつ、細々したサービスの個々の決断をさせずに利益を増やしています。
セットメニューの方が利益が積み上げやすい業態は、かなり積極的にセットメニュー展開しているので、参考になる部分は多々あります。
問題は、美容業界においてセットメニューが利益を底上げするかという点ですよね。
本題に入る前に、もう少しだけ大事な基礎の話をさせてください。
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お得感を出すための「アンカー」という魔力
アンカーと言う言葉をご存知でしょうか。
アンカー(anker)は錨(イカリ)という意味ですが、マーケティングの世界ではとても重要な心理訴求です。
この記事をご覧のあなたもそうだと思いますが、何か商品を購入するときに最終的には損か得かを考慮して購入の決断しますよね。
損か得かを判断する1番重要な要素は「商品の価格」です。
その損か得かを判断する材料となるのが「最初に目にする価格」となり、これが「アンカー」と言われるものです。
人の脳は単純です。
最初に目にした金額より高ければその商品は「割高」と感じますし、最初に目にした価格よりも低ければ「お得」と感じるもの。
これを「アンカリング効果」っていうのですが、この心理訴求は日常でもよく使われていますよ。
カーディーラーや家電量販店などでは店頭であえて「高価な商品」をみさせていますね。
ECサイトなどでは
通常3,980円のところを、今なら500円!
という景品表示法スレスレ(多分NG)の訴求もよく見かけます。
これ全部アンカリング効果です。
中小零細企業から大企業まで、数多くの企業体が取り入れているということは、
めちゃくちゃ効果があるから
です。
実践しない手はないのですが、このアンカリング効果を美容室の価格表示にどのように使っていくのかがポイントになりますね。
先ほどのケースで言うと、
カット価格が5,000円というアンカーになっているので、2,000円のトリートメントがお得と感じやすい。
そのため、トリートメントの成約が増える。
だから、別々表示の方がいいんじゃないの?
って思いそうですよね。
違います!
価格決定の回数が多いこととアンカリング効果はメリット&デメリット双方存在するため、100点満点の訴求ではありません。
理想的な訴求とは、ここからさらに工夫していきます。
もちろん、利益を引き上げるための工夫です。
おとり商品見せてますか?
購入の決断回数をできるだけ減らしつつ、さらにセットメニューで利益を増やしたいですよね。
だから、できるだけセットメニューをセットメニューを推していきたいわけです。
ただ、意地悪なことを言いますが、実は冒頭の質問
Cut5,000円+Treatment2,000円
Cut&Treatment7,000円
この2つは、おそらく大きな違いをうみません。
5,000円と2,000円という単純な計算は、我が家の小学2年生の長男でもできます。
つまり、この程度の差であれば関係ないと言うこと。
そこで具体的な価格表示を考察します。
メニュー | 金額 |
カット | 5,000円 |
カット(トリートメント付) | 7,000円 |
ん?
こう見ると、印象として「5,000円のカット」と「7,000円のカット」と判断されかねませんよね。
そうすると、お客さんの中には「高いよ!」って思う方も出るでしょう。
もちろん、単純計算で「あー、トリートメントは2,000円かー。」と推測する人がほとんどですが、この訴求だとお客さんにお得感を感じさせる効果はありません。
だからこのセットメニューの訴求はNG
では次の訴求はどうでしょうか。
メニュー | 金額 |
通常カット | 5,000円 |
潤艶トリートメント付きカット | 7,000円 |
これで2つの違いが出てきましたよね。
カット同士で比較させるのではなく、可能な限り「別のメニュー」として見せていく方法です。
このメニューの方が、特別感がありますよね。
ただ、これだとまだまだ不十分。トリートメントの成約は増えません。アンカリングがないからです。
と言うことで次の表示はどうでしょうか?
メニュー | 金額 |
【限定】ヘアエステカット(ヘアケア診断+カット+潤艶トリートメント+アフター診断) | 9,000円 |
潤艶トリートメント付きカット | 7,000円 |
カット | 5,000円 |
メニューのネーミングは「美容師ではない私」が考えたので笑わないでください。。。
ただ、このメニュー構成だと、9,000円のメニューがアンカーとなり、次の潤艶トリートメント付きカットがお得に感じられますよね。
この限定メニューは、いわゆる「おとり商品」です。
おとり商品とは、売れてくれたら利益は増えるけど、もし売れなかったとしても、本当に売れて欲しい商品が「お得」と思わせてくれる「おとり」となる商品です。
売れて欲しい商品(サービス)があるなら、このおとり商品を見せた方がいいですね。
ただ、上の価格表示にはまだまだ改善点があります。
おとり商品の見せ方にも工夫が必要ということです。
極端回避の法則で意識すべきこと
先ほどの例
メニュー | 金額 |
【限定】ヘアエステカット(ヘアケア診断+カット+潤艶トリートメント+アフター診断) | 9,000円 |
潤艶トリートメント付きカット | 7,000円 |
カット | 5,000円 |
この金額設定では9,000円、7,000円、5,000円
となっており、価格差は一律2,000円です。
この価格差、実は理想的なルールがあります。
心理マーケティングにおいて、理想的な価格差は、「6:4:3」と言われています。
この割合に関しては、サービスや商品、元々の金額によって変わってくるので、それほどきっちりする必要はありませんが、大事なことは、「高いものを高く見せる」ということです。
この考えで価格設定すると、
メニュー | 金額 |
【限定】ヘアエステカット(ヘアケア診断+カット+潤艶トリートメント+アフター診断) | 9,000円 |
潤艶トリートメント付きカット | 6,000円 |
カット | 5,000円 |
や
メニュー | 金額 |
【限定】ヘアエステカット(ヘアケア診断+カット+潤艶トリートメント+アフター診断) | 11,000円 |
潤艶トリートメント付きカット | 7,000円 |
カット | 5,000円 |
の価格表示が理想的と言えます。
あくまでも「トリートメント」を成約させるための価格表示の戦略ですが、このような細部の工夫も売上アップには効果的と言えるでしょう。
メモ
ちなみに、AppleのiPhoneの新モデルが、いつも3パターン(64G、128G、258Gなど)発売されているのは、このアンカリングと極端回避の法則(松竹梅の法則)を使っているためです。
約5割のユーザーが真ん中のモデルを購入しており、利益率が最も高い真ん中のモデルに誘導されているということです。汗
まとめ
価格を1つ決めるだけでも、
その価格をどのように見せるか考えるだけでも、
利益は大きく変わってきます。
特にフリーランスの方は、このような価格表示の知識を身につけておくと、利益に直結しますね。
メモ
以前、私がサポートしていたお店も、価格表示を工夫してすぐに利益が伸びましたし、インスタ運用勉強会に参加されているメンバーさんも、価格表示を工夫して結果出しています。
即効性ありです。
今一度、ご自身のお店の価格を見直してみてはいかがでしょうか。